荒関仁志教授


「学習意欲が湧いた時に,何時でも何処でも学習できる環境を提供するのがコンピュータ・ネットワークなんですよ。」

Q.担当科目の概要についてお教えください。
  「情報処理技術」を担当しております。これはどの専攻の科目というわけではなく,パソコンに不慣れな人が,それに習熟するために設置されているものです。そうした性格上,この科目は主に1年生を対象にしていまして,1年間でパソコンを基礎から学習して頂くようになっています。この授業には2週間に一度,年に約10回程度のレポート提出とスクーリング授業により,誰でもパソコンのエキスパート(?)になれるようにカリキュラムが構成されています。
 2週間に一度のレポートというと大変そうに思われるかもしれませんが,内容的には優しいものなので心配はありません。パソコンに触ったことのない方でも,電子メールやワープロ,表計算,データベース,ホームページの作り方などを,順を追って習得することが出来きますので,パソコンに不慣れで心配な方は,是非受講してください。

Q.先生の経歴,研究テーマについてお聞かせ下さい。
 
学生時代は,理論物理や高エネルギー物理の研究をしていました。しかし残念ながら,それではなかなかご飯を食べていけなかったんですよ。そこで,研究の中心を,その当時流行りだしたコンピュータに移しまして,1985年に日大の理工学部物理学科の大学院を卒業後に,日立ソフトウェアエンジニアリング(株)へ行くことになったんです。そこでは人工知能分野の一つである「自然言語処理」の研究していました。
 そうした経緯がありまして,今度は日大理工学部内にあります短期大学部に,情報科学関係で教員になることになったんです。1990年代初めから半ばにかけて,まだインターネットも普及していない時代でしたけども,コンピュータを使った情報教育システムの開発を中心に研究を行ってきました。
 そしてこれが縁になりまして,この通信制大学院でも教鞭をとることになったわけです。現在は,最近注目の人工知能や人工生命について研究しております。この研究は簡単に言えば,環境に適応しながらシステム自身が考えて行動ができる自立型システムを作るということです。ここで私が使っている人工知能の技術は,「遺伝的プログラミング」という技術です。人間や生物が進化する場合,遺伝子を使って進化してきたわけですが,それをソフトウェア上で実現しようというものなんですよ。システムを遺伝子に見立てた情報を使って,親から子,そして子から孫へと世代交代をさせながらプログラムを進化させるのが私の研究テーマです。
最近は,この人工知能を利用したベイジアンネットワーク(条件付き確率)の研究も行っています。このベイジアンネットワークを使うと,人と人との関係を,ネットワークを使った統計処理で理解できることが分かってきました。現在,この研究の応用として,安全・安心対策に適用する研究を始めています。
 また,情報教育の研究に関して申し上げますと,私が元々研究してきた,教育支援システムの研究も続けています。研究テーマは,100%コンピュータだけで教育を行うことは出来ないというスタンスで,如何にして教育を支援できるシステムを作ることができるかを考えています。これは,「学生さんは忙しい」というコンセプトで研究しているんですよ。現実問題として,世の中には数多くの学生さんを抱える大学がいくつもあります。また学生さんも通学,そしてアルバイトと忙しいものです。そうした状況の中でいかに効率的に,都合よく勉強できるシステムを構築できないだろうかと,つまりはそういう研究になりますね。
 さて,その具体的研究内容につきましては,今では一般的になりましたけども,コンピュータ・ネットワークを使ったホームページ上での教や「CSCW(Computer-Supported Cooperative Work)」,グループウェアを使った教育が,その主たるテーマになっております。これは,コンピュータを介して,多くの人たちがひとつの仕事をこなしていくということです。それを教育の場に応用することは出来ないか思っています。

Q.インターネットを使った通信教育についてのご感想は?
 
実は私,専門がその分野だということもありまして,このシステムの構築には早い段階から関わってきたんですよ。はじめは,私の得意とするグループウェアやCSCWを使って,最新のネットワーク教育システムを作ろうという話を進めていたんですよ。そうした経緯でこのシステムを作り,そして運用を始めたんですが,やはりどうしても技術屋の目でシステムを見がちになってしまうんですよ。こちらの感覚であんまりガシガシやってしまうと,学生さんも教員もついてこられなくなってしまいますので,そのあたりのバランスを執りながら,実際の運用に合うように,逐次改良していきました。特にこの大学院は非情報系で,社会系の学生さんが多いですから,こういうカスタマイズが必要になりますね。
 私の授業においては,特にサイバーゼミなどは使ってはいません。メールによるコミュニケーションが主体になっています。私の授業内容自体が複雑でないこともその一因ですが,こうした通信教育における私の基本的なコンセプトが「非同期型教育支援システム」なのも大きいですかね。折角コンピュータ・ネットワークを使うのですから,学生さんには時間的な制約を課したくないですからね。何時でも何処でも好きな時に質問なんかしたいと思いませんか。
 私はこのようにコンピュータ・ネットワークを使ったシステムの場合,電話と同じように全てインタラクティブにしていたら意味がないと思うんですよ。非同期で,それぞれの空いた時間を活用できることこそが,その大きな利点ではないでしょうか。
 とはいえもっと細かい内容を,また研究指導をする場合などにおいては,そうしたものも必要になってくるでしょうね。