眞邉一近教授


「~心理学」というと何でも心理学になっちゃうんです・・・全部で今現在100以上あるんですよ

Q.担当されている講義についてお教えください。
 「コミュニケーション心理学」と「心理学研究法」です。いわゆる心理学といいますと,どの大学や大学院でも人気があって割合受講生が多いんですけれども,特に「コミュニケーション心理学」はどなたも関心を持たれるタイトルの様で,多くの方が受講されています。
 コミュニケーションというのは,人間が社会生活を営む上での基本要素です。それで「コミュニケーション心理学」というのは“コミュニケーション”を心理学的に研究するわけですけれども,その扱う範囲は非常に広いものです。
 コミュニケーションをとるためには,まず相手の言っていることを聞き,それを考え,それに対してアウトプットを出す,という一連の流れがありますが,そのときにただ聞いてるだけではなく,相手の表情やしぐさを見たり,あるいはその前後の文脈を考えたりと複雑なことをやるわけですね。そういう複雑なことをするときに,基本となる聴覚や視覚といった知覚から始まって,それをどのように解釈するかという認知の問題,それからそれを相手に伝える方法。例えば日本人に対しては日本語で言わなくてはいけないしアメリカ人に対しては英語で話さなくてはいけないという,そういう語学とかスキルの問題もあるし,同じ日本語で伝えるにしても相手によって話し方を変えたりといったコミュニケーションスキルという問題も出てくるんですね。また,中にはどもったりするあがり症の人がいたりして,コミュニケーションが上手くいかないケースが出てくる。それを上手くやるためのスキル訓練という問題,あるいは臨床心理学の分野,それから集団の中でどうやってコミュニケーションするかという社会心理学の問題。このように“コミュニケーション”というひとつのキーワードで捕らえても非常に幅広いんですね。「~心理学」というと何でも心理学になっちゃうんです。数え上げた人がいて,全部で今現在100以上あるんですよ。「コミュニケーション心理学」っていうのはそのほとんどを網羅するくらいの分野です。
 実際には基本的な知覚の話から入ります。そして最初の課題は,我々が感じている世界は「心理的世界」って言うんですけれども,実際の物理的世界とはズレや違いがあるわけですね。実際は同じ長さの線でも,両端に矢羽を外向きにつけたり,内向きにつけたりすると,長さが違うように見えます。この様に,実際とは違ったように受け取ることがあります。音声でも同じようなことがあります。相手の口の動きを見た場合と見ない場合とで聞こえてくる音が違うことすらあります。そういう問題をレポートに書いてもらいます。次の課題は,人がコミュニケーションの方法を身につけていくときに,生まれて乳児から幼児になって児童になる,だんだん大人になっていくわけですが,その間にいろんなことを学ぶわけです。そこで,どのような要因,どのようなプロセスを経てコミュニケーションスキルを身につけていくのかをまとめてもらいます。これが前期です。
 後期になると,人と上手くコミュニケーションするにはどうしたらいいかというスキル訓練の問題を扱います。もちろん自分のスキル訓練もなんですが,コミュニケーションは相手がいてはじめて成り立つわけで,いかに合わせるかということが必要になるわけです。その時に,自分が構えていると相手も構える,自分が嫌っていると相手も嫌うということがあるので,そのへんを上手くやるにはどうすればいいかということを考えます。いろんな方法論があって,どちらかというと河嶋先生が担当されている行動分析学の知識や方法論に基づいて,どのように環境を配置したらよいか,あるいは人間関係をどうしたらいいか,といった問題を勉強するのが後期になります。
 つぎに「心理学研究法」ですけれども,この科目は,心理学領域の研究を行う場合に必要とされる方法論の講義を行います。心理学は「科学」ですので,科学的方法論を身につけていないと研究が出来ません。心理学の方法論は大きく分けて3種類あります。一つ目は,比較的多くの人数を対象として実験的に検討する研究方法で,二つ目は,質問紙などの調査を用いて行う研究方法です。三つ目は,特に臨床などの応用場面で必要となる少ない人数を対象とした場合の研究方法です。調査に基づいた研究方法については,田中先生が調査分析特講で講義されますので,私の講義では,一つ目と三つ目の研究方法の講義が主になります。前期は,心理学の研究方法を概観した後,グループデザインと呼ばれる実験計画法について学びます。この実験デザインは統計法が必須ですので,同時に統計法の学習も行います。当大学院ではパソコンを無料で貸与していますが,そのパソコンにあらかじめインストールされているソフトに,SPSS があります。これは,統計計算によく使われているソフトです。このソフトが十分使えるように,レポートのやりとりを行いながらマスターしていただきます。また,心理学領域では,結果をグラフで表現するスキルが必要とされています。これまで全くパソコンを使用したことがない方でも,Excel などのソフトを使用して図を描く指導を行っています。前期のレポートを書き上げる頃には,皆さん統計ソフトを使いこなし,きれいに図を描けるようになっていますよ。後期は,少数例を対象とした実験計画法を学習します。前後期通して心理学に最低限必要とされるスキルの訓練を行いますので,心理学領域の研究をされる方は,必修科目と考えていただいてよいと思います。

 平成15年度から博士課程が開設されましたが,博士課程の担当科目は学習心理学です。出来るだけ受講者の研究領域に関連した学習心理学関連の論文を教材に行っています。

 特別研究は,先程申しましたように「~心理学」というと100以上を越えるということで,彼らの研究テーマは実にさまざまです。論文指導の場合,自分の専門に合わせたテーマを学生に与えてやらせる,というのがオーソドックスなんですけれども,私の場合はそういうやり方を採らないで,科学的な心理学であることを最低条件として,テーマは何でもいいということにしています。ですから,看護婦さんが同僚の看護婦さんのカウンセリングみたいなものを提言するにはどうしたらいいかとか,医療ミスを無くすにはどうしたらよいかとか,あるいは航空管制官のミスを無くすにはどうすればよいかとか,そういう問題もあるし,肥満の人の減量プログラムをどうしたらよいかとか,さらにはインターネットの世界で遠隔教育をやるときにどうしたらよいかとか,我々が文章を読むときに,パソコンで読むのと本で読む場合とどういう違いがあるかとか,実にさまざまです。  ウチの大学院の特色なんですけれども,社会にすでに出ていてそこで問題意識を持っていて,それをやりたいということで志望し入っていらっしゃる方が多いです。つまり最初に研究テーマがはっきりしているわけです。中には入ってから,そういうテーマじゃなかなか論文にならないよということで途中で変わる人ももちろんいます。ただ私としては最初の疑問点とか発想のところを大切にして,それを科学的に検証していくにはどうしたらよいかということを手助けしてあげるのが方針です。
 博士課程の場合は論文指導というのではなく,共同研究というかたちで一緒に博士論文を作り上げて行きたいと考えています。領域としては,比較心理学,学習心理学,音響心理学,心理学的観点から見た遠隔教育などを想定しています。。