松岡直美教授

「学生たちといろんな世界への扉を次々と開けていきたいですね」

Q.研究者になられたきっかけや、これまでの経歴などについてお聞かせください。
 私は大学卒業後、アメリカに留学したのですが、そこでは日本について語る必要がありました。日本に戻れば、今度はアメリカについて語ることが求められました。語るからには既成概念やステレオタイプ・イメージを繰り返すだけでなく、より本質的な、お互いにとって意味のあることを伝えたいと思ったことが、研究者となるきっかけであったように思います。

Q.アメリカ留学の意義は?
 留学先はアメリカ中西部のイリノイ大学だったのですが、それまではテキストで読んだだけの世界であった「アメリカ」を、その一部にしろ、実感できました。英語も私にとって意味のある生きた言葉になりましたし、小説などの文学にしても単なる言語表現などではなく、人間や社会の営みそのものであると理解するようになりました。一方、日本の外に出て初めて、「他者」であることを実感できたのだと思います。「他者」の視点を獲得することで世界の複層性が見えてきますし、文化的対話を進めることの重要性も理解できました。世界が違って見える、広がったと思える瞬間が何度もありました。これまで自分が当たり前と思っていたことが、ガラガラと崩れていくという不安な瞬間でもありますが、こうした体験を、ぜひ学生の皆さんと共有したい。一緒に、いろんな世界への扉を次々と開けていきたいですね。その意味で、英語や中国語、ハングルなど、外国語は「もう一つの世界への扉」のキーだと思っています。

Q.これまでの学生の研究テーマについて教えて下さい。
 「多文化主義の語りの試み-テレサ・ハッキョン・チャ『ディクテ』と柳美里『8月の果て』」、 「歴史、土地、アイデンティティ―ウィリアム・フォークナーの「ヨクナパトーファ」と大城立裕の沖縄」、「トニ・モリソンの語りの力」、「カズオ・イシグロ研究―信頼できない語り手による比喩世界」、「村上春樹文学にみる死生観」、「ラップ・ミュージックと60年代公民権運動」、「ヴィジュアル記号―言語閉鎖性の超越」、「司法通訳における言語等価性」、「複合社会シンガポールの創出」、「英国若者文化の系譜」など、多岐にわたっています。将来、国際交流や文化交流の場において必要なスキルの向上を目指す方、大学など教育・研究機関にあって、専門知識の更新や指導力の向上を目指す方、人間の死やアイデンティティなど、自分のための問題探求・解決を目指す方など目的も様々ですが、ここでの研究が一つの拠り所になるようにと願っています。