階戸照雄教授

定跡は覚えて,自分流に取り組むことではじめて実用的になるんです

Q.趣味や休日の過ごし方は?
 小学生からやっている将棋ですね。日本将棋連盟のアマチュア5段の免状を持っています。「三手の読み」で有名な故・原田泰夫先生が,旧富士銀行の将棋クラブの顧問で,先生より免状をいただいたんです。私は日本将棋連盟公認の将棋普及指導員で,この制度が最初に設けられたときのひとりなんです。実力のある人にならアマチュア2段までの段位を認定することができるんですよ。でも,将棋は勝っているときはいいんですが,負けると悔しいんですよね。

Q.将棋が経営学に生かされる部分はあるのですか?
 将棋には,この状況にはこれが最善手だという,名人や名棋士たちが残した定跡があって,その定跡を覚えることが強くなるコツなんです。同様に経営戦略でも,マイケル・ポーター教授の著書『競争の戦略』の「5つの力」や「コストリーダーシップ戦略」のように,戦略の柱になる定跡があります。将棋をやっているとわかるのですが,定跡を覚えたての頃は上手く使えなくて弱くなってしまうんです。経営学も同じで,定跡を覚えただけでは上手く使えません。定跡に自分流の考え方を取り入れることで乗り越えていき,自分のものになっていくんですね。定跡を押さえて,自分のものにしていくということが重要だというのは,将棋と経営学に通じるものだと思います。

Q.志望者に向けて,一言お願いします
 強い問題意識を持ってほしいというのがあります。所属している企業や団体などを,どう運営していきたいのか,どういう戦略を持っていきたいのかを常に考えてほしいんです。それが論文や,研究のヒントになることもあります。身近にあるものへの関心が一番強いと思うので,それを学問の枠組みに当てはめて,その解答を論文で解く,というのも面白いと思います。そういう気構えを持って来ていただけると,もっと学問が身近になると思います。

Q.先生にとって,学問とはどのようなものでしょう?
 あえて言うなら学問は定跡ですね。学問を知らないと誤った方向へ行ったり,時間をロスしてしまいます。学問を学び,覚えることによって,実務者や学問を学ぶ人が更に向上できるのだと思います。ただ,実務から離れた学問ではいけないんですね。実際の物事は,学問のようにきれいには進まないですから。突っ込んで言うと「名人に定跡なし」と言われるように,新しい手法を見つけて自分で定跡を作る人が,一握りの成功者になれるんだと思います。そのような人がこの大学院から生まれてくれるとうれしいですね。