田中堅一郎教授

「(「報酬」を「分配」するような「場面」においては)色々と複雑な感情が出てきますから」

Q.先生の経歴,研究テーマについてお聞かせ下さい。
 学部の卒業論文では,「集団発達」について研究しました。あるサークルにまったく見ず知らずの1年生が入り,その知らない人同士が仲良くなっていくプロセスを追跡調査してみたんです。
 そして修士論文ではちょっと趣を変えまして,「報酬分配場面における公正さと好ましさ」という研究を行いました。平たく言ってしまえば,金銭をいかに分配すれば不公平感がなく,またそれぞれに適切な金額を配当することが出来るかという問題ですね。やはりこうした場面には,色々と複雑な感情が出てきますから,それを心理学的に考察してみようと考えたわけです。
 続く博士課程でも,引き続き金銭やそれにまつわるものの分配や支給方法,身分の処遇,待遇についての研究を行いました。論文のテーマも「報酬分配に関する社会心理学的研究」という,修士論文を敷衍したものになりました。
 博士課程を何とか修了した後は,無事に講師として弘前の東北女子短期大学へ行くことが出来ました。そこで2年過ごしたのち,今度は浜松の常葉(とこは)学園浜松大学(現常葉学園大学)で5年間,その次に赴任した広島県立大学(現県立広島大学)経営学部で4年間,そして2003年度から,こちらの大学院で教えることになりました。
 また今後の研究につきましては,基本的にこれまでと同様の枠組みで続けていこうと考えています。現在は特にその中でも職場や組織について興味がありますので,不公平を感じた従業員の行動などについても,今後より研究を深めていきたいですね。
 ところで,私はこのように企業経営に関わる分野をその専門としておりますが,特に経営学の専門知識があるわけではありません。しかし浜松の大学では国際経済学部,広島では経営学部でしたので,周囲は経済や経営の専門家ばかりという環境に長くおりました。そのおかげもありまして,耳学問ではありますけども,そうした側面から見た組織や職場,また景気・不景気の問題などを,少なからず自分の研究に反映出来ているのではないかと思います。

Q.インターネットを使った通信教育についていかがお考えですか?
 やはり日頃の論文指導のやり取りは電子メールを使って行っています。研究を進めていく上 で,困ったことが出てきた時や,切羽詰まったり考えが煮詰まったときには,メールならすぐに相談できますから便利ですよね。ただ,それを受け取る側の私にとっては,結構返事を出すのに意外と時間がかかって大変だったりするのですが。
 ただ,メールのやり取りとコンピュータによりサイバーゼミナールだけでは研究指導にも限界があると,就任したときから私は思っていました。そこで,私の指導を受ける大学院生の皆さんとは,「定例会」と称して1,2ヶ月に一度できるだけ全員が一堂に会する機会を設けています。夏にはほぼ全員参加で2泊3日の合宿もやりますし,2014年には金沢で,2015年には神戸で「地方定例会」もやりました。皆さん時間を工面して集まるのは大変なんですが,それでも『遠くまで行くのは勘弁してほしい』みたいな意見は今のところ出てないようですね。